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あなたは自分で書く? それともAIで書く?

先日、ポール・グレアムの「Writes and Write-Nots」の中で、こんな文章を見つけました。

in a couple decades there won't be many people who can write.

(20年後には、文章を書ける人はほとんどいなくなるでしょう。)


…いくらなんでも、大袈裟じゃないか? しかし読み進めるうちに、考えておくべきテーマがある気がして、このメールを書くことにしました。

もしかするとあなたは、執筆にAIを使っているかもしれません。

僕は調べ物で使いますが、執筆には使いません。特にこのメルマガに関しては、生涯、自分で書きます。ポール・グレアムは、AIに執筆を任せることで何が起きるか語っています。

AI has blown this world open. Almost all pressure to write has dissipated. You can have AI do it for you, both in school and at work.

The result will be a world divided into writes and write-nots. There will still be some people who can write. Some of us like it. But the middle ground between those who are good at writing and those who can't write at all will disappear. Instead of good writers, ok writers, and people who can't write, there will just be good writers and people who can't write.

(AIはこの世界を大きく変えた。書くプレッシャーは、ほぼすべて消え去った。学校でも職場でも、AIに代筆させることができる。

その結果、書く人と書かない人に分かれた世界が生まれるだろう。まだ書ける人はいるだろう。私たちの中には、それを好む人もいる。しかし、書くのが得意な人と全く書けない人の間の中間層は消滅するだろう。優れた書き手、まあまあの書き手、そして書けない人という区分けではなく、優れた書き手と書けない人だけが存在するようになる。)


一度知った予想は、自分でも想像できます。たしかに、中間層は消えるかもしれません。正確な予測はできませんが、自分で書く人は1割ぐらいになるかも。AIで書く人が9割。これは、悪いことでしょうか? 答えは、イエスです。

なぜか?

書くことはただ文字を並べることではなく、考えることそのものだからです。

AIに執筆を任せれば、あなたの思考が入る余地は少なく、書くことを通して考えることができません。

今、深夜2時26分です。

少しばかり苦労しながら、この文章を書いています。

AIに任せれば、ラクでしょう。僕より優れた文章を書くかもしれません。わざわざ、自分で書く理由は? 僕が最も恐れていて、かつAIで書く人達を疑っているポイントは、執筆そのものではなく、思考を丸投げすると予想しているからです。「いや、AIは相棒として使うんだ」と主張するかもしれませんが、魔法のように文章を書いてくれる相棒が現れた時、なぜわざわざ頭を捻って考える必要があるんでしょうか? 考えることが好きならまだしも、ただお金を稼ぐ目的ならなおさらです。

もし考えることを放棄すれば、自身の世界観を構築できず、ただ文章(情報)を扱う人になります。そしてこれは、AIが最も得意とすることの1つ。

ここまで読み進めてくださったあなたなら、僕がAIでの執筆に否定的なのがおわかりでしょう。

このエッセイでは、3つの視点から語ります。あなたはどう感じるか、よければ考えながら読み進めてください。

ラクな道は、おそらく最も競争が激しい道になる

AIで書く人は増えます。

なぜなら、人はラクをしたい生き物だからです。ライティング界においては、「すぐに稼げる」「手っ取り早く」「たった〇〇するだけで」といった言葉をよく見かけます。あなたも使ってきたかもしれません。僕も使ってきました。

「だって、コピーライティングのテクニックだから」と主張できますが、それはつまり、相手がラクをしたい存在だとわかっているからです。

「食べながら、何もせず痩せられる」といったいかにも怪しい謳い文句に引き寄せられるのも、似た理由でしょう。中には「なぜ、そんな話を信じるの?」と疑いたくなるものもあります。しかしそれほど、人はラクに惹かれる性質を持っているということです。

通勤電車でゲームをし、ひたすらTikTokをスクロールしている人々を見るのは、もはやお馴染みの光景です。これらを考慮すれば、多くの人がラクをしたくて、面倒から逃げたいと考えているのは想像できます。そこに文章を書いてくれるAIが登場すれば、使わないと考える方が難しいでしょう。最初は少しずつ任せ始め、すぐに全てを丸投げするようになる。

ラクなんだから、いいじゃないか? 何が悪いんだ? そう思うかもしれません。しかし、大勢と同じ行動は、最も競争が激しい場所に行き着きます。そして、独自性も生まれません。AIの文章を手直しすることであなたの色が入り込む余地はありますが、最初からあなたが書くのと比べると独自性はない。そこにあるのは人の気配ではなく、文字の羅列であり、情報です。そして、そんな文章が無数に存在することになります。

大勢がごった返す広場で、どうやって見つけろと言うんでしょうか?

あなたが尊敬する書き手が特別である理由は、彼らが独自の視点を持ち、独自の思考を通して、自分の言葉で語っているからです。

人は人に従いたい

実はこのエッセイを書くにあたって最初に浮かんだのは、15年以上前に観たある映画でした。

クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』です。

​当時、夢中になったのを覚えています。「絶対に観た方がいい」と熱弁して、友達を映画館に連れて行きました。なぜ、夢中になったのか。映像が素晴らしいから? ストーリーが面白いから? あるいは、ディカプリオや渡辺謙といった有名俳優が出ているから? 厳密には、どれもイエスです。

でも最大の理由は、クリストファー・ノーランという一人の人間の頭からこの映画が生まれたことに奇跡のような可能性を感じるからです。

人は人に従いたい。

少なくとも僕は、人が生み出すもの、あなたが生み出す文章を読んでそこにあなたを感じたい。

今のAIは、脚本も書くでしょう。映像もゼロから生成し、見たことない美しい映像を生み出す。時にあなたを笑わせ、泣かせるでしょう。でもそこには、人間が生み出すものとは違う微妙な境界線を感じるはずです。人間びいきかもしれませんが、僕はインターネット空間に生きているわけではなく、この湿気と台風による頭痛を感じる現実世界に生きているので、そこに生きる人間に従いたい。

AIと同じ部屋に入り、AIが脚本を書く様子を眺めれば驚くでしょう。でもそれより、クリストファー・ノーランと同じ部屋で、彼が脚本を書いている様子を見たい。

もし、AIが作った映画だと知っていたら、わざわざ週末の夜に映画館に行くでしょうか。ポップコーンとコーラを買うために、列に並ぶでしょうか。

感覚的な話をしているのは自覚しています。ただ、あなたの文章を読む相手はAIではなく、映画を楽しみに待つ僕のような人間だということです。あなたの読者は単なる情報ではなく、あなたから生まれる言葉を求めています。

書くことは、生き甲斐そのものである

最後は、さらに個人的な主張です。

もし、あなたが執筆を単にお金儲けの手段と考えているなら、この話は共感できないかもしれません。しかし、書くことを通して人生を良くしたいとお考えなら共感いただけるはず。

AIは、あなたに代わって文章を書けます。あなたは思考を放棄せず、良き相棒としてAIと二人三脚で歩けるかもしれない。

しかし、もしあなたが書くことが好きで、書くことそのものが喜びなら、なぜAIに任せるんでしょうか?

書くのは苦しい。いつも順調にはいかないし、考えがまとまらないこともあります。僕もこのエッセイを書きながら、意味をなしているか不安です。でも書いてる。なぜなら、書くこと自体が生き甲斐だからです。そして、苦労して曖昧なアイデアと格闘しておくことで、特別な未来につながると信じているからです。

このエッセイをあなたが読んでいるのは、2026年7月4日以降です。

数年後、僕は大阪淀屋橋のホテルにいるでしょう。ついさっき、数年前に送ったこのメールにあなたから返信が届いたばかりです。コーヒーを味わった後、部屋であなたのメッセージを読みました。特別な午後として、生涯記憶に残るでしょう。あなたの視点、あなたの感想を読み、世界のつながりを感じます。

夜は友達と会うんですが、まだ時間に余裕があるんです。あなたのおかげで、2026年に書いたエッセイを読み返す機会をいただきました。

過ぎ去った日々。

部屋の窓からは、大阪の景色が見える…

もし執筆をAIに任せていたら、僕の未来に、この特別な1日は存在しないでしょう。

AIなら、もっと上手く書けたかもしれません。僕の思考を通しているので、偏りも出ているはずです。

でも、それこそが価値です。

あなたもエッセイを書いてみてください。きっと、多くの混乱があるでしょう。上手く言葉に出来ないこともあるでしょう。でもそこに、AIにはないあなたらしさがあります。

僕は永遠に、自分で書きます。

あなたは?

Tatsuya