長男はツライよ

実は密かに『夢日記』を書いている。

夢日記。読んで字の如く、夢でみた内容を日記として記録することである。

ちなみに、毎日書いているワケではない。夢を見ない日もあるし、夢を見ても起きた瞬間に寝ぼけて書けない日もある。勿論、二度寝の誘惑に負けて書けない日もある。誘惑に負けなくても、書こうとした瞬間に夢の大部分を忘れることもある。

つまり、”ほとんど書けない”のだ。

なので、冒頭の一文である”実は密かに『夢日記』を書いている”は正確な表現ではない。

正しくは、”実は密かに『夢日記』を書こうと試みているが、ほとんど書けた試しがない”である。

「いやいや、書けるっしょ?」と思うかもしれないが、本当に難しいのだ。

寝る時には、手の届く場所にノートとペンを用意するのだが、起きた瞬間にその存在すら忘れていることもある。眠る直前には、「寝返りをうった瞬間にペンが頭に刺さるんじゃなかろうか?」と、恐怖と戦っているにも関わらずだ。

そもそも夢日記を書こうと思ったキッカケは、自分の意思とは関係なく見る夢の内容を脚本にいかせるのではないかと思ったからで、その発想自体は「結構良いのでは?」と思っているものの、肝心の夢日記が一向に書けない。

理由は先程から申し上げている通り。様々な妨害行為に見舞われるからである。

しかし!

しかしだ!

今朝、起きた瞬間、ふいにチャンスが訪れたのである。

壮大な夢を見たし、起きた瞬間寝ぼけもしなかった。加えて、二度寝の誘惑も襲って来ず、おめめギンギン。夢の内容もバッチリ覚えていたし、ノートとペンの存在も忘れていない。

またとないチャンス!夢日記を書くには、完璧な状況設定である。

時間経過とともに夢の内容はあいまいになるので、大急ぎで書き始めようとした…

が!

しかしである!

ペンを持つ指に力が入らない。ペンを持つのさえままならないほどだ。時折やってくる握力がゼロになる瞬間。まさにその数年に一度の瞬間が、夢日記を書くチャンスに直撃したのである。

ペン先が滑り、自分でも判別不能なミミズ文字が紙の上を走る。「なんとか記録せねば!」と奮闘すること数分。その間に夢の内容はほとんど忘れ、ノート上には意味不明な文字の羅列が残った。

唯一、読むことが出来た一文は、『弟の許可をもらって家に帰る』である。

詳しい夢の内容は、もう忘れてしまったが、どうやら僕は弟に許可を得なければ家に帰れない身分らしい。そこには兄貴の威厳など微塵も存在しない。

ツライぜ長男。