人生における美しい瞬間は唐突に訪れる

昨日、Second Diaryの更新が出来なかったので、今日は昨日の話を少し。連日、引越しについて色々と書いてきた。今はすでに埼玉県の新居に居て、椅子に座って文章を書いている。パソコンでではなく、スマホで。ネットの工事が来月8日まで来ないので、今はネットが繋がっていない。

さて、昨日の話。小雨が降る中、朝の7時半に家を出て東京都中野区沼袋へ向かった。11時に管理会社の人が来て、旧自宅アパートの室内の最終チェックがある。中野駅で降り、途中コンビニで朝食用のパンと肉まんを買う。ここ最近、ネコのイカスミを見かけなかったので、アパートに向かう前にいつも居る草むらを確認してみるが、またまた居なかった。どこへ行った、イカスミ。アパートに着いたのが9時過ぎで、まずは腹が減っては戦は出来ぬとばかりに床に座ってパンを頬張る。うん、上手い。アパートでの最後の朝食。引っ越してきた当初、深夜にドンキホーテまでの道を何往復もして担いで運んできた本棚と椅子、そしてハンガーラックを粗大ゴミに出した。散々お世話になった、ありがとう。床にコロコロをかけたり、細かい部分をウエットティッシュで拭いたり。当然、ぼくの次の人が入居するまでの間に室内清掃は入るんだろうけど、思い出の詰まった場所なので、最低限感謝の気持ちを示しておきたかった。それがぼくにとっては掃除だった。

管理会社の人が来る前に床に寝転んでみた。この2年間寝ていたのと同じ場所で。寝袋はもう無い。前日の朝に処分してしまった。かたく冷たい床がそこにあった。でも辛くなかった。視線の先には磨りガラスの出窓がある。年季が入っているせいもあって所々汚れてはいるが、休みの朝なんかは寝袋に横になったままボーッと眺めていると、太陽の光を反射して、時々、まるで細かい砂の宝石が煌めくように美しく光ることがある。何度かそんな息をのむような朝を迎えた。人生における美しい瞬間は唐突に訪れる。昨日はあいにく曇っていたけれど、魔法の出窓はいつもと変わらずそこにあった。ぼくはいつまでもこの出窓を忘れたくないと思った。

管理会社の人が来て、無事に室内のチェックも終わった。借りていた鍵を返す。担当者が出窓の左右を大きく開ける。こんなにも開く窓だったんだ、と思った。ほとんど開けたことがなかったから、全く知らなかった。約2年住んでいたけれど、ぼくの知らないことがまだあった。きっとまだあるんだろう。でも、ぼくがそれを知ることはもう無い。最後、管理会社の人を部屋に残してアパートを出た。ぼくが住んだ部屋。草むらにイカスミはまたまた居なかった。