ウイスキーは味を愉しむものだよ

真夜中を少し過ぎたタイミングで、近くのドンキホーテへと買い物に出かけた。お目当てはペットボトルのお茶と水。冷蔵庫の中が未だスカスカなので、とりあえず何か入れないとサマにならないような気がしたのである。昨夜の埼玉は結構強めの雨が降っていて、傘をさして、なんとか身を守ろうとしたのだけど、暗がりの中、巨大な水溜りを踏んでしまい、昨年末に買った真っ白なスリッポンが汚れてしまった。プライベート用、唯一の一足がである。こんな時、持ちアイテムが少ないと困る。激落ちくんで擦りまくって、なんとかことなきを得た。

帰宅後、深夜2時頃から映画を観始めた。鑑賞したのは「ニューヨーク、アイラブユー」。数年前、まだ20代の頃に何度か観た映画で、ふと、改めて観返したくなった。いくつもの短編が交差する構成になっていて、個人的に好きな一本だ。引越しにともなって調達した新しい椅子に深々と座り、ゆったりと流れる時間を映画と共に過ごす。まさに至福の時間…であるはずだったのだが、途中から強烈な歯痛に襲われた。奥歯が痛い、たまらなく痛いのだ!次第に物語が頭に入ってこなくなる。マズイ、マズイぞ。こんな時間に開いている歯医者はないし、明日は朝から予定が入っている。独り激痛に翻弄される中、とりあえず何か対策を練らねば、と思い、一旦、「勘違いだ、勘違いに違いない!」と思うことにした。いや、思うなんてヌルいものじゃない。完全に思い込んだのだ。痛みなんて勘違い、勘違いなんだから痛くない、余裕、アハハ、という理屈である。勿論、言うまでもなく、こんなまやかしの精神論なんぞ痛みを和らげるのに1ミリの効果もなくて、あえなく撃沈。強烈に痛みが増してきた。続いて、常備している鎮痛剤を服用してみることにした。いつもは効くはずの鎮痛剤も、この時ばかりは何の役にも立たず。完全にピンチ。その後も色々と考えた後、ついに最後の作戦を遂行することにした。

そう、お酒である。実は引越しする時に、中野の酒屋で一本ウイスキーを買ったのだ。なぜ買ったのか、という詳細はまた別の機会にでも書くとして、ザックリ言うと、2年間という時間をかけて、一本ウイスキーを飲み切ろうと考えている。新居初日も真夜中に飲んだのだが、昨夜は味を愉しむためではなく、痛み止めとしてほんの少しだけ服用してみることにした(勿論、味も愉しむ!)。酔えば感覚が麻痺して痛みが緩和されるのではないか、と考えたのだ。加えて、昔、大人達が、「風邪を引かないために酒で喉を消毒する」と言っていたのを思い出した。風邪と歯痛、状況こそ違えど本質的には似ているような気がしてきた。当然、そこにお酒を飲むための口実が多分に含まれていて、あらゆる解釈を自分の都合の良いように捻じ曲げているのは火を見るよりも明らかではあるが、痛みが緩和される可能性があることであれば、試してみたい。鎮痛剤を飲んでからも結構時間が経っていた。物語を書く人間として、実際に歯痛に苦しむ登場人物を書くことが今後あるかもしれない。その時に、お酒を飲ませるという選択肢を持つためには、自分で試してみるのが最も嘘がないし、リアルな反応を書ける…と、こんな感じで色々御託を並べてストレートでクイっと一杯煽った。チェイサーもセットでガブガブと。

結果、痛みが緩和されるどころか、お酒で血流が良くなったせいか余計に痛くなった。今後、お酒を使っての粗治療は控えることにする。皆さんも真似をしないように。頼みます。ちなみに、今はもう大丈夫。先程、歯科に行って治療してきた。やっぱり正攻法がいい。歯痛には歯医者だ。先生曰く、「深夜は副交感神経が、ウンタラカンタラなので痛みますぞ」とのこと。ウンタラカンタラ…?それなりに肝心な部分を聞き逃した気がしてならないが、まあ、痛みも無くなったことだし、よしとしよう。やっぱりウイスキーは味を楽しまないとね。僕自身、まだまだウイスキーの味がわかる深みある男のレベルにはないけれど、ちょっぴり格好をつけて本日のブログを締めることにする。ウイスキーは味を愉しむものだよ、諸君。では本日も素敵な一日をお過ごしください。